約 5,047,921 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2715.html
何かを得るためにはそれ相応の代価を支払はなければならない 7月26日(火) そして次の日、私はまたあの騒音の中にいた。耳が痛くなってきそうなほどの音量で、様々な音が混ざり合っている。やっぱりこの空間には慣れそうにない。 「そう? あたしは慣れてるけど」 「私は二回目」 「私に関しては初めてですよ……」 肩に乗ったシリアが、私の顔を支えに座っている。冷たい指の感触が頬に伝わる。 「大丈夫?」 「うん、なんとか……」 シリアもこの空間には馴染めそうにないな、と思いながら私は神姫バトルのコーナーを見た。 今日もいい賑わいを見せている。中学校や高校が夏休みに入ったためか、若いマスターが多く見受けられた。中には親子連れの姿まである。 ちなみにお金に関してだが、ちゃんとリアルマネーだ。さすがにゲームセンター側としても運営が成り立たなくなってしまっては困るだろう。 だが神姫センターでの買い物にはspt(神姫ポイント)を使うらしい。これはバトルに勝てば手に入り、また運営にお金を払えばもらえるそうだ(倍率は0.2倍だとか)。 ただまあ、神姫バトルでリアルマネーを賭けた勝負は禁止らしい。3年前にはちらほらやっていたらしいが、今は警察の目が鋭くなっていてここ最近では数は少なくなったとか。全部華凛から聞いた。 「これって交代制だよね?」 「そうよ、沢山いても回転率次第で早く回ってくるから、今のうちに用意して起きなさいよ?」 相変わらず天井に吊られているモニターを見る。なるほど、確かに画面右上には時間制限のような数字が見える。300秒らしい。つまりいくら長引いても5分で片がつく作りになっているようだ。 つまり私の番が回ってくるまで軽く時間がある。それまでに私は華凛に聞きたいことがあるのを思い出した。 「華凛、神姫持ってないんだよね?」 「んー? ないわねー」 華凛はあくまでモニターから目を離さずに生返事した。 「じゃあ、なんでこんなに神姫に詳しいの?」 「…………」 華凛はモニターを見たまま黙っている。だがその横顔には戸惑いの色がハッキリ見て取れた。 「……知りたい?」 その時、華凛の声が幾重にも重なったゲームの音に遮られずにやけに鮮明に聞こえた。何か、変な気分だ。まるで、知ってはならないことを知ろうとしているような―― まるで、華凛の嫌な過去を知ろうとしているような、そんな感覚。 私は、華凛のことはだいたい知っている。私のことは話したし、華凛のことも話してもらった。 だが、まだ私の知らない華凛がどこかにいるようだと薄々思っていた。まだ私は、親友のことを全部知っていない。 「……知りたい」 私はそう答えた。華凛が進んで話してくれるなら、私も黙って耳を傾けた。だが、今はそうではない。私から求めている。今までにない緊張感が、私の体の中に走る。 「…………」 華凛は目を閉じた。逡巡しているようにも見える。やがて、ゆっくりと目を開いた華凛は、 「えいっ」 私の頬を両手で引っ張っていた。 「そっかー、知りたいかーっていうか柔らかっ、あ、なんかクセになりそう……」 「か、かふぃん?」 しばらく私の頬をむぎゅむぎゅと引っ張った後、ようなく華凛は離してくれた。 「あー、柔らかいわね、いやホント。マシュマロみたいってこういうこと言うのね」 「……痛い」 「ごめんごめん。で、なんであたしが神姫に詳しいかだったわよね?」 「うん、そう」 「それはね……」 「……それは?」 華凛は十分に間を取ってから話しだした。 「実は、あたしも神姫が欲しいのよ」 「……?」 それがどう神姫に詳しいことに繋がるのだろうか? 「あたしって下調べとかは結構するからね、神姫が欲しいから、色々調べたのよ」 仁さんも色々教えてくれたし、と華凛は語った。確かにあの人の神姫の話は面白い。調べているうちに詳しくなったと華凛は語った。 だが、なんだかんだ言って今の理由は嘘だろう。華凛が私の考えてもいることが分かるように、私だって華凛が嘘をついているかどうかぐらいすぐに分かる。 華凛は嘘をついている。でも、その意味まではわからない。 (話したくなったら、話してくれるよね……) 私は華凛がいつか話してくれると思いながら、自分の番を待った。 (何で……話せなかったんだろう……) あたしの隣にいる小柄な少女は、緊張した面持ちで自分の神姫と話している。 それにしても、なぜあたしは樹羽に話せなかったのだろう。 (神姫……か) 神姫を見ていると、不安になってくる。その小さな体は簡単に壊れてしまいそうで―― (違う……そうじゃない……そんなの言い訳だ) あたしはもう一度樹羽を見た。さっきよりは緊張はほぐれ、真っ直ぐ前を見ている。 あの真っ暗な部屋で塞ぎ込んでいた子が、2週間も経たないうちにここまで成長するとは、あたしも驚いた。 違うな、多分これが本当の樹羽の姿なのだろう。自分の殻を少しずつ割って、ゆっくりと本来の樹羽が出てきているのだ。 (この調子で行けば、夏が終わる前に樹羽の引きこもりは治るわね……。そしたら、あたしは……) そこまで考えて、あたしは頭を振った。今からそんなことを考えても仕方がない。 だが静かに迫るその時を、あたしはただ待つしかなかった。 直前の人がバトルを終え、私の番が回ってくる。 相手は青年だった。椅子に座り、対戦相手を待っている。ポケットからイヤホンを出そうとしたが、こちらの姿を確認すると黙ってまたポケットにしまった。 少し背が高い。それにしっかりとした目、キレのある顔立ち。なんだかんだ言って、つまりかっこいい人だった。 だが、なんとなく近寄りがたいオーラが出ている。私が声を掛けようか悩んだが、 「よろしく……お願いします……」 とだけ言った。だが、声が小さかったせいか、相手には聞こえていなかったらしい。 私の中で気まずさが残った。どうしようか悩んでいると、後ろから声がした。 「あれ? 東雲じゃん。何やってんの?」 華凛だった。後ろから対戦相手をに話し掛けている。話し掛けられた方は、華凛を見るや、目を見開いた。 「あ、秋已? お前こそ、神姫も持ってねぇのに何やってんだよ?」 「あたしは付き添い。本命はこの子」 東雲と呼ばれた人は、こちらを改めてみた。 「てことは、やっぱり対戦相手ってことか。俺は東雲榊(しののめさかき)。よろしくな」 「奏萩樹羽……よろしく……」 適当な言葉が見当たらず、私はそう答えた。東雲くんは肩をすくませると、 「シンリー、対戦相手だ」 と台に向かって言った。 台には一人の神姫の姿があった。普通の神姫より少し小さい。黒いポディに金髪。生では初めて見るが、アルトアイネス型の筈だ。 シンリーというらしい彼女は台の上で何やら書いていた。神姫サイズの小さなノートに、何やら走り書きのような文字がちらほら書いてある。 「ちがう……こうじゃない……もっとこう、テーマを絞って……」 ああでもないこうでもないと何やらぶつぶつ呟いている。 「な、なにがあったんだろう……」 「さあ」 シリアも対戦相手に挨拶しようと出てきたが、肝心の対戦相手が取り込み中だ。 「ちょっと東雲、どうしたのアレ」 「ああ、あいつ作曲出来てな、最近スランプらしいから気分転換に来たんだが……」 気付けばネタ帳を持ち出し、気分転換にならないらしい。 「曲作れるんですか? すごいですね」 シリアは初対面の相手に普通にしゃべっている。社交性はシリアの方が上だな、やっぱり。 「ああ、ネットで『Day Black』って偽名であげてるよ」 『Day Black』、直訳すると、『東雲』になった筈だ。 「そう、なんですか……」 シンリーはまだぶつぶつ言っている。あれでバトル出来るのだろうか? 「バトルは、出来るの?」 疑問をそのまま口にしてみる。すると、東雲くんはちゃんと答えてくれた。 「出来るっちゃ出来るな」 「何よそれ、つまり100%じゃないってこと?」 「ま、そうなるな。だけどナメんなよ。強いぞ、俺たちは」 にやりと笑う東雲くん。 「いいじゃない、その勝負、乗ったわ!」 「華凛、戦うの私とシリア」 だが華凛はそんなことお構い無しでことを進めた。気付けば椅子に座って、ヘッドギアを着けている自分がいる。 「シリア、行ける?」 ポッドに収納されたシリアに尋ねる。 『私は問題ないよ。でも、シンリーさん大丈夫かなぁ?』 耳元のスピーカーからは、シリアの心配そうな声が聞こえてくる。 「相手のことを考えるのはいいけど、バトルには集中しよう」 『うん、そうだね。集中集中……』 私もあの状態のシンリーは気になる。だが、対戦相手なのだ。やるなら、全力でやらないと失礼だろう。 私はボタンを押した。既に聞きなれたアナウンスが流れ始める。 『…3、2、1、0、RideOn―――』 そしてカウントがゼロになり、私の意識は神姫にライドした――。 東雲と樹羽の勝負が始まった。あたしはモニターで二人の勝負を観戦している。 (また、やってしまった……) 昔から挑発には弱く、すぐに受けてしまう。これは樹羽の勝負なのに、何やってるんだろうねあたし。 (でもまだあたしが引っ張らなきゃいけない時期か、さすがに一人でゲーセン行けって言うのは時期尚早よね……) モニターの中の樹羽は、武装を展開している。まもなく戦いが始まるだろう。 (それにしても、樹羽のあの能力だけは予想外だったわね……) 通常、人の脳では指示することの出来ないブースター部分に指示を送ることが出来る。これは普通に身に付くものではない。この能力を使いたいからといくら努力しようとも無いものはどうしようもない。 (樹羽は……普通じゃない……) だからどうと言うわけではないが、やはり気にはなる。 (でも、本人も知らない能力だし。樹羽のお母さんに聞く? いやいや、そんなこと聞けないでしょ) 結局あたしは、樹羽の能力については何もわからないままなのであった。 第六話の2へ トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinki_ss/pages/68.html
※このページは、各投稿者様の神姫紹介【五十音・ハ行】ページです。 五十音順で配置。読み仮名違いなど、ソートにご意見あればまとめwiki管理人のメールアカウントに直接投げてください。 素体略称は、以下の略号で表記します。 ヘッドと素体が異なる場合(例「頭・犬/素体・兎」)は「ヘッドの素体名を記入」して 紹介本文にて素体構成を書いていただくようお願いします。 【略号一覧】 天使:アーンヴァル 悪魔:ストラーフ 忍:フブキ 猫:マオチャオ 犬:ハウリン 兎:ヴァッフェバニー 騎士:サイフォス 侍:紅緒 津軽:ツガル 花:ジルダリア 種:ジュビジー 砲:フォートブラッグ 鳥:エウクランテ 魚:イーアネイラ 海豚:ヴァッフェドルフィン 黒天:アーンヴァルbk 白悪:ストラーフwh 寅:ティグリース 丑:ウィトゥルース 建機:グラップラップ 水猫:マオチャオ(リペ) 水犬:ハウリン(リペ) HST:アーク HMT:イーダ 蝶:シュメッターリング 戦車:ムルメルティア 戦闘機:飛鳥 火器:ゼルノグラード 黒鳥:エウクランテbk 黒魚:イーアネイラbk 白HST:アーク 白HMT:イーダ カブト:ランサメント クワガタ:エスパディア サソリ:グラフィオス コウモリ:ウェスペリオー 天コマ:ウェルクストラ 夢魔:ヴァローナ ナース:ブライトフェザー シスター:ハーモニーグレイス フェレット:パーティオ リス:ポモック 【投稿フォーマット(追記用)】 ●神姫名(アンカーを挿入)/素体型:(ヘッドの略号)/投稿者:(「武装紳士録」投稿者アンカーへリンク) オーナー:(設定上のオーナー名です) / 所属:(組織所属であれば記入をお願いします) 投稿者紹介: オーナー様のコメントです。 コメント: 投稿者様以外の方で、この神姫嬢に対するコメントをお願いします。 コメントの最後に、お名前を付記してください。【CainEdge】 【ハ行】 ハウ(犬) ぱぴこん ハウリー(犬) strangedays ハウリン(犬) ツインガンナー ハクウ(天)ティーノ バニー(兎) あると パラレル真夜(侍) タイガ ハル(天使) 蓮吻(レンウェイ) バルクホルン(悪魔) セイロン パルティア(魚) ゆーげん ハルトマン(犬) セイロン ビアンカ(天使) ぱぴこん ヒカリ(光)(天使) 雪見 ヒカリ(鳥) 蓮吻(レンウェイ) 氷雨(忍) 風雷坊 ヒジリ(天使) Yukari 姫月 華倶夜(悪魔) 万年睡眠不足 緋藤(侍) 我闘 ヒルダ(津軽) 白羽 フィア(悪魔) K-Kurasawa フィア(天使) 風雷坊 フィリア(黒天) 風雷坊 フェス(津軽) 比呂雪 フェスティア(鳥) 風雷坊 フォーチュナ(白悪) 雪冠(ゆきかんむり) フォルテ(鳥) あると フブキ(忍) あると フブキ(忍) 白羽 フブキ(さん)(忍)ティーノ フレア(忍) シン=アカツキ フレア(津軽) 風雷坊 ベティ(悪魔) Ex-Mavis ヘルツ(黒天) 比呂雪 紅緒(侍) ツインガンナー 紅緒(侍) ぱぴこん ベル・ゼファー(悪魔) 白羽 ●ハウ / 素体型:犬 / 投稿者:ぱぴこん オーナー:虹浦としあき / 所属: 投稿者紹介: オーナーの元に、猫型MMSと共にやってきた神姫。 個性的な神姫達の中にあって、唯一常識的な神姫でツッコミ役。 ただマニアックな面もあり、他の神姫達には分からないネタを 持ち出し一人悦に入ることもある。 まおちゃを溺愛しており、日常は一緒に行動していることが多い。 コメント: ===== ●ハウリー / 素体型:犬 / 投稿者:strangedays オーナー:strangedays / 所属:ストレインジ・エレクトロニクス社所属 投稿者紹介: 次女。超がつくほどの無邪気さと元気を持つ娘。どーかんがえても妹達のほうが 姉に見えるが本人は気にしていない。しかし、メカに関してはSE社の数多くの 機体のテストを任されるほどの腕らしい。 コメント: ===== ●ハウリン / 素体型:犬 / 投稿者:ツインガンナー オーナー:ストーリー設定上無し / 所属:対イリーアン組織「I.M.B(IMmigration Bureau)」 投稿者紹介: 愛称ハウ。 「I.M.B」所属の科学者で兵器開発等を行い、トライスピナーも開発したが トライスピナーに対しては開発者というより母親のような感情を持っている。 洞察力に優れストラ達になにか変化があってもすぐに見抜く。 ストラの胸の鉱石や能力の調査も行っている。 コメント: ===== ●ハクウ / 素体型:天使 / 投稿者:ティーノ オーナー:マスター / 所属: 投稿者紹介: 『白き羽』という意味の名前を与えられたマスターの最初にして唯一の神姫。 純真な心と優しさを持っており、誰にでも分け隔てなく接する。 当初は信頼しながらもマスターと衝突することが少なからずあったが、 それらを乗り越えて今では神姫とオーナーの関係以上に親しくなっている。 CSCの近くに謎のブラックボックスが埋め込まれている。 コメント: ===== ●バニー / 素体型:兎 / 投稿者:あると オーナー:あるとの友人 / 所属: 投稿者紹介: 居候神姫で謎多し。フブキと異なり主にソフトウェア主体の開発を行う。 コメント: ===== ●パラレル真夜 / 素体型:侍 / 投稿者:タイガ オーナー:タイガ / 所属:回収屋 投稿者紹介: エガオノママデに登場した真夜。 パラレルワールドの真夜なので、基本的には真面目。 タイガの考案した剣術と歩法を用いて戦う。得意技は神速の抜刀術。 コメント: ===== ●ハル / 素体型:天使 / 投稿者:蓮吻(レンウェイ) オーナー:沙耶 / 所属: 投稿者紹介: 元々ハンターと呼ばれる犯罪者だったが。リン達に倒され沙耶の手によって 修復され今ではそのころの記憶はすべて消えており幸せな日々をすごしている。 サポートメカ「サクラ」と合体する事で春桜になり遠距離戦を得意とする。 コメント: ===== ●バルクホルン / 素体型:悪 / 投稿者:セイロン オーナー:セイロン / 所属:旧大陸戦試験体義勇独立小隊 第9空挺特殊兵装試験旅団 投稿者紹介: 略称バル。 昔はマスターと戦場を転々としていたが、今は面影すらなく、他の神姫をいびって 楽しむのが日課。ハルトマンとはある部隊で知り合ったユーティとは姉妹。 コメント: ===== ●パルティア / 素体型:魚 / 投稿者:ゆーげん オーナー:ゆーげん / 所属:ゆーげんズ・ガレージ 投稿者紹介: 十女。同時期に起動したレラ(後述)とは双子の間柄で、精神年齢の高い彼女が年上。 穏やかな物腰で音楽や歌に造詣が深いが、時々それが勢いづいて暴走することもあるという。 要は雰囲気に呑まれやすい体質。 D.W.D.S.(ダイレクト・ウェーブ・ディスチャージャー・システム)搭載のオルフェウスを所有している。 コメント:デスメタルバトルのときは、激しいボンテージに身を包み、教官モードのときは手刀で相手に斬撃を見舞う…あらゆる意味で魚型最強か? 【CainEdge】 ===== ●ハルトマン / 素体型:犬 / 投稿者:セイロン オーナー:セイロン / 所属:第9空挺特殊兵装試験旅団 投稿者紹介: バルクホルンやリーネと共にやってきた神姫。 自分は普通のつもりだが、普通じゃない一面が多々ある。ムッツリでむっちり 体系であることを気にしている。たがが外れると、過剰な百合に走る バルクホルンとは第9空挺特殊兵装試験旅団で上司と部下の関係 コメント: ===== ●ビアンカ / 素体型:天使 / 投稿者:ぱぴこん オーナー:虹浦奈緒 / 所属: 投稿者紹介: 虹浦としあきの実妹が持つ神姫。 自称、ノワール(悪魔型)のライバル。ドジっ娘属性で、ケーキと仲がいい。 普段は自分のマスターの部屋に一人で居るが、頻繁にノワールの元にやってくる。 基本的に戦闘能力は高いハズなのだが、武装をまったく使いこなせていない。 危機一髪をノワールの乱入によって救われる場面もしばしば。 コメント: ===== ●ヒカリ(光) / 素体型:天使 / 投稿者:雪見 オーナー:雪見 / 所属: 投稿者紹介: 雪見家のぽやや担当。いわゆる天然。 どんな場面でも自分を貫くそのマイペースっぷりは最強と言えなくもない。 コメント: ===== ●ヒカリ / 素体型:鳥 / 投稿者:蓮吻(レンウェイ) オーナー:沙耶 / 所属: 投稿者紹介: 元々特殊航空機動課に配属予定だった三姫のウチの一姫、ある事情から スノーフレークだけの配属となり、紀藤を通じて沙耶の下に届けられた。 根はしっかりとしており、ユキとハルを止めるのにあたふたとするが 明るくその名の通りの笑顔を見せる。 「ヒカリ」とはハルの前の姿、ハンターの本名で、深層心理内でハルが聞いた 名前を彼女が妹に付けてあげたのだ。 コメント: ===== ●氷雨 / 素体型:忍 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・電子戦部隊シャドウダイバーズ 投稿者紹介: 最近設置された電子戦部隊シャドウダイバーズの副隊長。 某アニメの電子の妖精の称号を獲得しかねないほどのハッカー。データ収集が 主な任務なので、戦闘力はあまり無いが電子戦では無類の強さを発揮する。 無表情で毒舌やボケをかます、風雷坊家唯一のギャグキャラ コメント: ===== ●ヒジリ / 素体型:天使 / 投稿者:Yukari オーナー:Yukari / 所属: 投稿者紹介: Yukari家の四女。 スケートとマッサージが得意で、魔法も使える。 いつも素直で礼儀正しいが、怒るとトンデモナイ無茶をしでかす事も。 コメント: ===== ●姫月 華倶夜(ヒヅキ カグヤ) / 素体型:悪魔 / 投稿者:万年睡眠不足 オーナー:万年睡眠不足 / 所属: 投稿者紹介: (頭・悪魔/素体:騎士) 一人称 アタシ オーナーの呼び方 マスター、アンタ 性格 蠱惑的、マスターの事以外はわりと淡泊だが妙に面倒見がいい、 マスターの為なら何しても赦されると思っている コメント: ===== ●緋藤 / 素体型:侍 / 投稿者:我闘 オーナー:闇代悪怒 / 所属:元ラボ所属 投稿者紹介: 裏世界に精通した非合法神姫、その正体は“限りなきもの”。 仮面を操る能力を持ち、仮面をつけられたものは抵抗することなく、 彼女の奴隷となる。現在はその能力をマスターである悪怒に封印されている。 語尾に「ござる」自分のことを「某」と、どこかの侍さんの言い回しをする不思議な仮面神姫。 コメント: =====●ヒルダ / 素体型:津軽 / 投稿者:白羽 オーナー:白羽 / 所属:中央神姫協会 投稿者紹介: 一度しか出てきていないww高速空中戦闘用OS『メビウス1』搭載 それぐらいしか決まってないww。 コメント: ===== ●フィア / 素体型:悪魔 / 投稿者:K-Kurasawa オーナー:K-Kurasawa / 所属:クラサワ研究所 投稿者紹介: 同研究所で起動した最初の神姫。マスターをからかって遊ぶのが趣味。 実力はあるのだが本気を出すことはほとんど無い。 コメント: ===== ●フィア / 素体型:天使 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 / 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・空戦部隊トライエース 投稿者紹介: 空戦型四姉妹の長女。リアルでお持ち帰りした三姫のうちの一姫。 ファントムクロスの神姫達の隊長でもあり、トライエースの隊長でもある。 バックアタッカー。基本的な性格・口調は『魔○少女リ○カルな○はStrikirS』の 高○ な○はとほとんど一緒。唯一違うのは好戦的だったりすること。 コメント: ===== ●フィリア / 素体型:黒天 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・マスター付きの護衛(仮) 投稿者紹介: 空戦型四姉妹の四女。風雷坊家のなかでは少し立場が変わっている。 メンバー中唯一ストライカーシステムを搭載。風雷坊家最強の神姫。 性格は天使型の標準的な性格をしてはいるものの、やはり好戦的。 コメント: ===== ●フェス / サンタ / 投稿者:比呂雪 オーナー:比呂雪 / 所属:(ストーリー「防衛隊のお仕事」では:連邦宇宙軍・第4防衛艦隊・中尉) 投稿者紹介: イタズラ好き、ヘルツが我が家に来てからはよく二人でつるんで、オーナーを困らせている。 コメント: ===== ●フェスティア / 素体型:鳥 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・空戦部隊トライエース 投稿者紹介: 空戦型四姉妹の三女。リアルでお持ち帰りした三姫のうちの一姫。 トライエースのフロント・センターアタッカー。軽度のシスコンではあるが、 最近マスターに気に入られているので、フィアとマスターへのラブ比率は3 7。 まじめで優しいが少しぽややんなところがある。やはり好戦的。 コメント: ===== ●フォーチュナ / 素体型:白悪 / 投稿者:雪冠(ゆきかんむり) オーナー:雪冠 / 所属:神姫TV所属雪冠プロダクション 投稿者紹介: やはり関西弁。サウシアと同じ陽気なキャラだが、ある程度の切れ者。 やっぱり巫女さん未実装。 コメント: ===== ●フォルテ / 素体型:鳥 / 投稿者:あると オーナー:ソプラノ / 所属:チームライトニング 投稿者紹介: こるりのパートナー。人見知りな性格で口数が少ない。 コメント: ===== ●フブキ / 素体型:忍 / 投稿者:あると オーナー:あるとの友人 / 所属: 投稿者紹介: 居候神姫で謎多し。新兵器運用試験と称してさまざまな装備を開発する。 コメント: ===== ●フブキ / 素体型:忍 / 投稿者:白羽 オーナー:白羽 / 所属:中央神姫協会 投稿者紹介: 幻覚戦闘用システム『ファントム』搭載 エガオノママデのクライマックスで負傷、セイレーン型に後に換装された。 (淑女録「ステンノ」参照)性格は黙して語らずだがその優しさは海より深い。 コメント: ===== ●フブキ(さん) / 素体型:忍 / 投稿者:ティーノ オーナー:??? / 所属:??? 投稿者紹介: 『困っている神姫とオーナーの元に風のように現れ、そしていつの間にか去っていくという伝説の神姫』 らしいが、今ではマスターの家によく入り浸り活動は控えているとかいないとか。 考え方がとても成熟しており、悩んだり感情的になったマスターによく助言をしている。 特殊神姫課のデータベースに外部からアクセスできるなど謎が多く、詳しい素性は一切不明。 名前を聞かれても「流れ者になった時に置いてきた」とはぐらかす。 コメント: ===== ●フレア / 素体型:忍 / 投稿者:シン=アカツキ オーナー:テツ / 所属:不明 投稿者紹介: テツの神姫。隠密行動を得意としており、戦闘においての力も一級品である。 コメント: ===== ●フレア / 素体型:津軽 / 投稿者:風雷坊 オーナー:風雷坊 所属:防衛庁直属機動神姫課第10課(通称ファントムクロス)・空戦部隊トライエース 投稿者紹介: 空戦型四姉妹の次女。リアルでお持ち帰りした三姫のうちの一姫。 トライエースの副隊長。バック・センターアタッカー。軽度のシスコンで、 フィアとマスターへのラブ比率が6 4。厳しい口調がたまに出るが、 基本的には明るく面倒見が良くて人見知りは割としないほう。ちなみに好戦的。 コメント: =====●ヘルツ / 黒天 / 投稿者:比呂雪 オーナー:比呂雪 / 所属:(ストーリー「防衛隊のお仕事」では:連邦宇宙軍・第4防衛艦隊・少尉) 投稿者紹介: ゴーイングマイウェイな正確でかわいい娘が大好き、口が悪いのがタマに傷 コメント: ===== ●ベティ / 素体型:悪魔 / 投稿者:Ex-Mavis オーナー:(軍属のため無し) / 所属:防空軍第601試験飛行隊所属 投稿者紹介: 少尉。22歳相当。 名前の由来は旧日本海軍一式陸上攻撃機の米軍コードネーム。 一応技術担当だが、ジルの配属により航空士へ転向、昇進。 とにもかくにも勝気な性格で保護者だろうと年上だろうと上官だろうと タメ口上等喧嘩上等。ただグレイスにだけは弱い。 コメント: ===== ●紅緒 / 素体型:侍 / 投稿者:ツインガンナー オーナー:ストーリー設定上無し / 所属:対イリーアン組織「I.M.B(IMmigration Bureau)」 投稿者紹介: ストラ達と共にイリーアンと戦っており、性格はまじめでちょっと堅いところがある。 過去に姉の「紅華」をイリーアンによって亡くしている。トライスピナーのことで ストラと冷戦状態になったこともあるが、現在は非常に仲が良い。 ★必殺技: 『乱舞・風斬り』 刀を高速で振るい作り出した無数の真空の刃で敵を斬る技。 『斬魔紅風・一刃』 特訓の末、紅緒が会得した技。最初の一歩を地面が陥没するほど強く踏み出し 一瞬にして移動速度をトップスピードまで引き上げ、そのまま敵を横一文字に斬る技。 コメント: ===== ●紅緒 / 素体型:侍 / 投稿者:ぱぴこん オーナー:虹浦としあき / 所属: 投稿者紹介: 一人称は「俺」。細かいことは気にしない、豪気な性格。 オーナーを恋慕っており、主の為ならどんな事も厭わない。 時々乱暴な言葉使いも出るが、姐御肌で妹分の神姫達から慕われている。 コメント: ===== ●ベル・ゼファー / 素体型:悪魔 / 投稿者:白羽 オーナー:白羽 / 所属:中央神姫協会 投稿者紹介: オーナーを事故から守ろうと両足を失っているが、神姫なのでいくらでも直せる はずなのに『乙女の勲章』と言い張って、ずっと砲撃型の足パーツを使用する ツンデレ。かなり焼きもち焼き。空間転移型戦闘システム『サタン』搭載 コメント: コメント: =====
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/498.html
前へ 先頭ページへ 次へ 出撃~接敵 1223時 114サーバー、ブリーフィングルーム(VR空間) 最初のブリーフィングタイムは特にこれといった話し合いも無く、ほとんど気の合った仲間内での自己紹介に終始した。小さな体育館ほどの広さのブリーフィングルームに二百体近くがいるのである。とても全員の顔や名前は覚えられないし、ましてや誰がどのような戦い方をするのかも不明瞭。結局はかねてからの知り合いを呼び出したり、たまたま側にいた者たちでくっついたり、マイティたちのようにアクセスポイントが同じであるがゆえに成り行きで一緒になったりして、各々個別に飛行隊を結成するくらいであった。ほとんどが飛行隊と呼ぶには間に合わせの体たらくであったが、それでも気取ってソロプレイをさせようとするオーナーはまったくと言ってよいほどいなかった。 実際の戦争かバーチャルバトルかに関係なく、多数と多数がぶつかり合う戦いは徒党を組んだ方が明らかに強い。長い人間の戦争史がそれを何度も何度も懲りずに証明してきたし、また一般人に身近なオンラインゲームの多人数戦闘でも、草創期からそのセオリーは絶対に崩れなかった。一騎当千などスタンドアローンゲームの中の存在でしかないのだ。 全員がホビーショップ・エルゴからの接続神姫で構成されたエルゴ飛行隊(ERGO Squadron)と名づけられたマイティたちのグループは、そもそもエルゴのバトルスペースを利用する神姫たちのレベルが比較的高くまとまっているからか、だいたいまともな構成員が揃っていた。 まず、飛行隊の主宰がファースト、セカンド各リーグにおいてトップクラスの神姫が揃っていた。飛行隊長はファーストランカーのシヅ(ここで断っておくが、ランクはオーナーではなく神姫自体に付与される。複数所有していればそれぞれの神姫にそれぞれのランクが与えられるのである。所有神姫が一体のみならば、神姫のランク、イコールオーナー自身のランクと読み替えてもかまわない)が務め、副隊長にはセカンド強豪の一体であるアーンヴァルのスノーボウ、またセカンドでは中級ながらも神姫自身の気違いじみた超重装備とオーナーのマニアックが功を奏した戦術指揮能力を買われ、ヴァッフェバニーのバーニング・ブラック・バニー、二体が就任した。 彼女らは五つに分割されたフライトのうち三つのフライトリーダーも兼任した。この時点でシヅのオーナー、バセットにより、フライト(四機編隊)、そしてエレメント(二機編隊)が振り分けられ、飛行隊としての体裁が整いつつあった。彼女に比べればほとんどヒヨッコである他の十九人のオーナー、そして彼らの神姫は、実戦経験豊富な文字通り老練の隊長に従った。 が、それでも、間もなく始まる第一次会戦においてバセットが作戦会議として言ったことは、 「自由に戦いなさい」 これだけであった。 シヅがオーナーの言葉を継いだ。 「大規模空中戦は誰もが初心者です。経験やランクの差、リーグの違いはあっても、スタート地点は同じなのです」 飛行隊員をぐるりと見渡す。 「大事なのはまず誰よりも早く慣れることです。ブルーチームの一人として、飛行隊の一員として何ができるのか。最初の戦いはおのずと模索の段階となります。リラックスして望みましょう」 要するに一番大事なのは怖がらないことなのだ、とマイティは自分なりに噛み砕いていた。 それでも彼女は漠然とした不安を完全に消すことができなかった。初めてのことはやっぱり怖い。ここにアクセスしたとき悲鳴を上げそうになったのも――別の理由で実際に上げてしまったが――いきなり体験したことの無い環境にほっぽり出されたからなのだ。 自分が新しい環境にこうも適応しにくいというのをマイティは初めて知った。今までは、オーナー登録も、バトルも、何もかもが「武装神姫としてすべきこと」としてあったために特に拒否反応を起こさなかっただけなのだ。どんなにトリッキーな対戦相手が現れようとも、それがバトルであるかぎりマイティは自然に闘えた。それが武装神姫の根底に根付いているのだ。ただの「神姫」ならともかく、「武装神姫」に戦いの嫌いな個体など無い。「武装神姫」として生まれた以上、戦いは陽電子頭脳の根底に刻み込まれた本能なのだ。人が毎日ご飯を食べるように、息を吸うようにできることなのだ。腕前は別として、戦うという行動自体に何ら弊害は存在しない。 このイベントは仮想空間の構築実験としても史上初ならば、武装神姫にとっても前代未聞だった。 目の前に展開された環境は何もかも、ここにいる神姫全員にとって、大規模空中戦以前に初めてのことばかりなのだ。 よく発狂しなかったものだとマイティは自分に感心した。むしろどうしてみんな平然としていられるのかという方が不思議だった。自分が感じやすいだけなのだろうか? こんなんで空中戦に出たらお先真っ暗だ。ナーバスになっているうちに天井のスピーカーからアラームが鳴った。 「ひっ!?」 それでマイティはまた叫びそうになった。察したシエンがマイティの肩を抱いて、安心させた。 『これよりハンガーへ移動します。総員、そのまま動かず待機してください』 放送からきっかり十秒後、ブリーフィングルームが消失した。エルゴ飛行隊以外の神姫も。 ◆ ◆ ◆ 1225時 11番コンソールルーム バーチャル空間が移動しハンガーに移動するのが画面に展開されると、マスターのところにも指示が来た。 『オーナーの皆様はカードを開封してください。カードは現在より以後、カードリーダーに差し込むことでいつでも使用できます。使用回数は一回のみ、再使用はできませんのでご注意ください。カードの効果については表面をご参照ください。なお、カードの効果は複数種類あります』 画面にビジュアルつきで説明される。 マスターは封を裂いた。プラスチック製のカードが出てきた。 カードの表面を見て、ちょっと困ったような表情を浮かべた。 そのままコンソールの横に置いて、マスターは再び椅子に深く腰掛け画面に注意を向けた。 マイティが心配だった。もちろんのことだが、彼女の新たな問題を、マスターも初めて知ったのだ。 ◆ ◆ ◆ BGM Hangar 1(エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー オリジナルサウンドトラックより) 同時刻 ハンガー(VR空間) 空中空母、と呼ぶに相応しい空間だった。 先のブリーフィングルームよりもはるかに広かった。 格納庫兼着艦デッキらしく、壁のあるほうから見て、カタパルトの付け根が乗ったエレベーター、その後ろには格納庫としてのだだっ広い空間があり、半透明のシールドシャッターを隔ててさらに後方には、尻尾のように長い着艦路が伸びていた。着艦路の末端の両側には尾翼らしき羽がある。 ハンガーは吹きさらしではなく、ちゃんと天井があった。カタパルト付エレベーターに乗せられた戦闘機はそのまま天井のハッチの向こう側にあるカタパルトデッキに上げられ、そのまま射出されるのだ。 全てが等身大サイズであった。つまり、エレベーターが実際の戦闘機サイズ(もちろん神姫スケール、つまり神姫が人間の大きさだとしてなのだが)、大きすぎるのだ。 二百体以上のブルーチームメンバーが散り散りに広がっていた。それでもなお十分すぎる余裕があった。本来ならば数十機の戦闘機が整然と並んでいるはずなのである。 カタパルトだけが神姫を射出するための構造であった。普通はエレベーター一台に付き一基しか無いが、ここではエレベーター一台に八基も取り付けられている。二フライト単位で打ち出せるというわけだ。 そのエレベーターが壁際、つまり空母の進行方向の壁にずらりと十台ほど並んでいる。発艦シーケンスを三回繰り返せば全員射出できる計算だ。 時間は調整されることは無いから、つまり急いで発艦しないと戦場に出遅れるというわけだ。ブリーフィングタイムのラスト五分にドックに移されるわけである。 そうと分かれば急がねばならない。もう周囲ではメイン装備の呼び出しが次々と行われ、終わった飛行隊からどんどんカタパルトに向かっている。 エルゴ飛行隊は一番はじっこのカタパルトのまん前を占拠し、装備の呼び出しにかかった。 戦闘開始まで残り四分を切っていた。 「準備の整った隊員から順次発艦してください。合流はフィールドで行います」 シヅの指示が飛ぶ。メンバーは口々にオーナーに装備呼び出しを請うた。 マイティはおろおろしながらも、 「マスター、メインボード展開です」 と震えの抑え切れない声で要請。 『分かった、もう操作している。出るぞ』 マイティの体を光るポリゴンの粒子が包み込む。 あらかじめ設定しておいた装備が顕現し始めた。 リアウイングAAU7を背負いありったけの推進装備を付けた従来の装備とは、今回は大きく様相を異にしていた。 まずAAU7の推進器付き主翼が、脚部に普通に履かれたランディングギアAT3の側面に直付けされている。翼表面にはスティレット短距離ミサイルが四発。膝ジョイントにはガードシールドが取り付けられ、これだけでデルタ翼戦闘機の主翼と垂直尾翼だとすぐに分かる。 両手にはそれぞれアルヴォLP4ハンドガンとカロッテP12ハンドガンを持ち、両手首にはM4ライトセイバーを装備。このように手に持ちかえず、装着箇所から直接光刃を発生させるやり方は、ライトセイバー使いの間ではもはや常套手段である。いちいち外して手に持つ手間など無いほうが良い。 つづいて上半身の武装が現れる。 胸部装甲はスラスターの付いたホーリィアーマージャケット、頭部はオーソドックスにヘッドセンサー・アネーロ。バックパックが最後に出現し、それはレインディアアームドユニット・タイプγだったが、リアスラスターユニットの代わりに戦闘補助としてシロにゃんが乗っかり、フォービドブレイドは外されてAAU7のバインダーとハグダンド・アーミーブレードがあった。 素体にそのまま羽をつける飛行タイプ神姫のシルエットはほとんど残っていない。まるで体全体がそのまま、機首の二つに分かれた未来的デルタ翼戦闘機を髣髴とさせていた。どこからともなく「ビックバイパーみたいだ」という声が聞こえた。 もうエレベーターはいっぱいで、マイティは次の発艦を待つ。 その間にシエンが、少し離れた場所でメインボードの呼び出しを行っていた。 頭甲・咆皇、ドッグテイル、ヴァッフェバニーのアーマー類。 シエン自身の装備はそれだけで終わってしまった。 「あれ? シエンちゃん、飛行装備は?」 「ああ、マイティ、ちょっと離れてて」 シエンが手をかざしてマイティを制止した直後、シエンの周囲の空間に一瞬ジャギーが発生した。 ガカカカカカカカカカカカカカ。 重たそうな処理音とともに、なにか巨大なものがシエンの前に呼び出されようとしていた。 明滅するポリゴンが下から集まってくる。 まるで映画「アヴァロン」の多砲塔戦車ツィタデルの出現シーンである。 メインボード展開としてはかなりの時間をかけ、現れたのは確かにある意味、戦車であった。 神姫換算四メートルちょっとはあろうかという、真っ赤な頭をした一つ目のロボットが鎮座していた。 「これが私の戦闘機、『クリムゾンヘッド』さ」 誇らしげにシエンは言った。 シエンがバトリングクラブで使っている、1/12フルモータライズスコープドッグを、専用の飛行装備に換装して持ってきてしまったのだ。 『あらあら、大胆ねえ』 バセットは笑っていた。シヅは相変わらず、忍者型MMSフブキ特有の表情の無さで、驚くことなく見ていた。 マイティをはじめ、周囲の神姫たちはぽかーんとしてその巨人を見上げていた。 「シエンちゃん、これ・・・・・・」 大丈夫なの? とまで言えなかった。ここにあるということは、少なくとも「許可された」ということなのだから。 シエンは誇らしげに巨人の体をひょいひょいと登り、あっという間に乗り込んで始動をかけてしまった。 「準備ができました。行きましょう」 シヅの一声で我に返る。彼女はもう装備を終えていた。リアウイングに必要十分に武装を引っさげた、かなりの軽装である。射撃武装はスティレット短距離ミサイルとカッツバルゲル中型ミサイルだけで、両腕はシェルブレイクパイルバンカーと忍者刀・風花という完全近接戦闘武装である。 マイティも一応ライトセイバーを腕に取り付けてはいるものの、これはサブ機能のレーザーガンとして主に使う算段であった。ライトセイバーとして至近距離で切るなんてことは、空中戦ではほとんど無いだろうと考えていたのだ。 マイティがシエンのスコープドッグを見つめている間に、他の隊員は空いた隣のカタパルトも使って皆すでに飛び立っていた。エルゴ飛行隊で残っているのはマイティとシエンとシヅの三人だけだった。 ぎこちない歩き方でカタパルトに両足を固定する。ランディングギアは歩行には向かない。 右隣のカタパルトにはシヅが立ち、左隣にはカタパルトを片足ずつ、二つも使ってシエンのクリムゾンヘッドが立った。 ガコン。エレベーターが動き、せり上がる。 同時に天井のハッチが開いてゆく。外は晴天。 上がりきると、本当にまぶしいくらいの晴天だった。雲ひとつ無い。いや、雲は空母の下に流れているのだ。風は強かったが、慣れているから気になるほどでもない。 なんというハイクオリティの空間構築だろう。マイティは思わず驚嘆した。 突然ガクンとカタパルトが前に傾き、マイティはびっくりした。 倒れるかと思ったが、体がほとんど水平になって止まった。シヅもクリムゾンヘッドも、同じようにうつぶせに近い状態になっている。 なるほど、こうして飛びたつのだ。 《エンジン推力を最大にしてください》 管制官からの指示が来る。 マイティは言われたとおりに、主翼のスラスター、ランディングギアの補助バーニア、そしてエレクトロマグネティックランチャーの後部電磁推進器の出力を上げた。 途端に凄まじいGがかかった。カタパルトが射出されたのだ。すぐ下のデッキが目にも留まらぬ速度で流れ、気がつけば空中に投げ出されていた。 《姿勢を安定させて!》 慌ててマイティは背筋を伸ばして飛ぶ。通信で呼びかけたのはシヅだった。彼女はマイティのやや右後方を飛んでいる。 これ以降ほとんどの会話は通信で行われることになった。肉声ではほとんど聞こえないのだ。戦っている間に会話するなどということも、ほとんど無いことだった。 ぐうん、と体に影かかかる。左情報に陽光をさえぎってシエンのクリムゾンヘッドが、大きな主翼を展開させて白い飛行機雲を引いていた。 《フィールドとは空間続きです。全速で合流しましょう》 三人はアフターバーナーで高空を飛ぶ。 1234時 特設フィールド「諸島」 そのフィールドは輪をかけて広大だった。ヘッドセンサー・アネーロの見慣れたHUD(※ヘッドアップディスプレイ。速力や高度、状態表示、武装のコンディション、レーダー、マップなど、必要情報が視界に重ねて表示される)を操作し全体マップを表示しても、いつものバトルフィールドと違って自分の居場所が本当に点に見え、アイコンはちまちまとしか移動しない。 二百体以上のブルーチームメンバーが、青いアイコンで固まっている。全員南から北上する。進路上、マップの中心域には大小さまざまな島が点在していた。 全開出力で赤いアフターバーナーをちらつかせながら、チームはそのまま北上した。予想するにレッドチームは北から諸島上空目指して南下しているに違いなかった。時刻は1235時をまわった。接敵まで最大五分以上かかる。実際の戦闘時間は一時間いっぱいではなく、どんなに長く見積もっても五十分少々ということだろう。ブリーフィングタイムも実質二十五分なのだから、全ての所要時間はマイナス五~十分と見積もればよい。 島の上空に到達するまでに、マイティたちは飛行隊の編隊を組んでおく。 各フライトずつ四機、フライトリーダーを戦闘にして傘型陣形。主戦闘部隊のヘッド、アームズ、トルソー三フライトが前に出て、チェスト、レッグスの支援系フライトがその後方につく。シヅやスノーボウの的確な指示で素早く編隊が組み終えられた。おのずとエルゴ飛行隊が最前列につく。 他の飛行隊もエルゴを見真似ていそいそと編隊を組み始める。が、もう下には諸島が見え始めていた。 今回は諸島上空の制空権確保がその任務である。 《こちらニーズ1、敵集団をレーダーに補足》 亀の甲羅のようなレーダードームを背負ったレッグスフライトリーダー、オーリーエンダーが報告する。 まだ視界には捉えられない。 《ヘッド1了解。全機このまま前進しましょう》 すかさずシヅの指示が来る。が、オーリーエンダーが反論した。 《待ってください。敵の数が・・・・・・》 《どうしました?》 《アルタ、全員に私のスクリーンを送って》 《ラジャー》 ニーズ2、アルタを通じて、エリント機であるオーリーエンダーの捉えた広域レーダー映像が飛行隊全員に送信された。 「これって・・・・・・!」 マイティは息を呑んだ。飛行隊全員がこわばる空気を感じた。 《多すぎるよ!》 隊員のだれかが悲鳴を上げた。 レーダー映像には、ブルーチームよりもはるかに大きな赤い塊が映っていた。敵、レッドチームである。 《戦力は拮抗してるんじゃなかったんですの!?》 チェストフライトの二番機、パーシモンケープが抗議した。 その答えはアームズフライトリーダー、スノーボウがすぐに出した。 《カードを使ったんだわ》 《ねぇさま、カードって?》 ショルダー2、千乃が暢気そうな声でリーダーに訊くと、 《おばか、オーナーが一枚ずつ持ってる特殊効果が出るカードのことです》 四番機のマリオンがうんざりしたように教えた。 他の飛行隊も状況を悟ったらしく、混乱が広がり始める。 通信がうるさくなった。 どうするんだ、このままじゃやられちゃう、逃げたいよう。どれをとっても弱気な内容しか聞こえない。 そうしているうちに向こう側にぽつぽつといくつもの点が見え始める。 「てっ、敵です、敵! 肉眼で確認!」 あわててマイティが全体通信で叫ぶ。 半ば口論に近い言い合いをしていたチームはいっせいに前を向いた。 1236時 諸島上空 接敵 《戦闘機だ》 クリムゾンヘッドの望遠カメラで確認したらしく、シエンが言った。 マイティもヘッドセンサーの望遠機能で見る。 確かに戦闘機だった。レッドチームの神姫に混じって、本当に戦闘機が飛んでいる。 総数およそ四百機。 『こりゃあ、アレだぜ』 呆然としてシエンのオーナー、ケンが言った。 『ポーカーで席に着いたばっかで、まずは様子見と思っていたら、隣のヤツがいきなりフォーカードを出しやがった、って状況だ』 《敵機、ミサイル一斉射!》 オーリーエンダーが怒鳴った。 ビーッ! ミサイルアラート。HUDが真っ赤に染まる。 《回避! 高度を下げて!》 シヅの命令が飛んだ。 戦力差三倍、記念すべき初戦が始まった。 前へ 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1879.html
第五回「街角に、ラララ海の底に?」 時報「どうも、時報です」 日暮「日暮です」 日暮「今回の質問は"神姫が活躍する分野はなんですか?"ですか」 時報「えっ…と、ですねぇ(MMS入門を開く)」 神姫(およびMMS)を扱う分野は幅広い。 ここに代表的なものを挙げる。 ○愛玩用 武装神姫を含むMMSの主な活動分野。 簡単に言えば「友達」である。 彼女たちはオーナーと共に暮らし、オーナーの幸せを第一に願う。 "愛玩用"とは聞こえが悪いが、そのような目的への商業的使用はMMS国際法によって禁止されている(個人でやるのは構わないが、度を超すと告訴されるので注意) ○精密作業 全高15㎝のMMSならではの分野である。 その範囲は自動車の整備から海底ケーブル内の修理、はてには人工衛星のメンテナンスなど幅広い。 ○消防・救急 耐火性能が低いMMSを火災現場に向かわせるのは自殺行為であるが、救助面での活動はかなりのものである。 瓦礫の下敷きとなった被災者を励ますのも彼女らの仕事である。 ○警察 近年増加傾向にあるMMS犯罪。 それに対処するMMS犯罪担当部署にも、MMSはいる。 違法改造MMSに対しては、同じくMMSで対処するのだ。 当然、法の範囲内での武装を施してであるが。 これには武装神姫を流用する場合が多い。 ○軍事 MMSの戦闘目的での使用は禁じられている…が、アメリカ軍は偵察用としてMMSを配備している。 だか、実際には戦闘に使用している模様(「MMS 軍事 戦闘」で検索すればすぐにお望みのサイトにいける(※フィクションです) (一説には、対人戦用MMSの開発が進んでいると言われるが、アメリカ陸軍はこれを否定) 時報「結局、軍事利用してしまう訳か」 日暮「そこが人間のサガという奴ですよ、役に立つものは何でも使いますから。…そういえば"対人戦用"といえば特b(ムグッ)」 時報「(言っちゃいけないでしょ)今回はここまで、それではまた次回~」 神姫無頼質問コーナーに戻る 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/537.html
眠れない夜──あるいは清らな誓い フェレンツェめからHVIFを3体“借り受けた”、その帰り道。 私・槇野晶は彼女らに服を買ってやる事とした。何せな、そのな? ……私と大きく変わらぬ外見年齢の、少女達の裸体を曝せるかッ! 鳳条院グループから女性社員用のスーツを借りたが、それだけでは 少々生活に苦慮するだろうし、彼女らの望む服を着せてやりたい。 「そう言うわけでだ、お前達三人には渋谷で服を買ってやろう」 「有り難うございますですの、マイスター♪服、ですかぁ……」 「うんとっ……マイスター、どんな服でも大丈夫なんですか?」 「勿論構わん。制服はいずれ返さねばならんしな、必要な事だ」 「……注目集めてるけど、ボク達大丈夫かな……マイスター?」 電車に乗る者が、珍しげに私達を眺める。原因は三人の造作だな。 アルマ・ロッテ・クララのHVIFは、何故か北欧系の躯なのだ。 蜂蜜色の艶やかな髪に、三人の色彩を象徴して輝く澄み切った瞳。 日本ではあまりお目にかかれぬ人種の、とびきりの美少女である。 それが三姉妹とあれば、いやが上にも人々の注目を集めてしまう。 「ほ、本当か!?本当にそれらの服で良いのかッ!?う、うぅ……」 「はいですの♪マイスターが作ってくれるお洋服は、大好きですし」 「ぅうッ!?……その顔で“大好き”と正直に言われると、そのッ」 「……マイスター、顔紅い。普段からだけど、今日は酷いんだよ?」 「い、いやな。似合いすぎて、照れるというか……その~……な?」 「えっと。何かこんなマイスターも可愛くていいですね、みんな?」 それが、あろう事か……ものすっごく可愛らしい少女趣味の服を着る! しかもその正体は、私が愛する“妹達”だ。ビジュアルが違うだけで、 こうも新鮮で、しかも胸が高鳴る物なのかッ!!私とお揃いだぞッ!? アンダーまで数セット含めると相当な額だったが、そんなの関係ない! という訳で改めて見惚れつつ、私達はアキバの我が家へと戻った訳だ。 「はぁ……着いたな。待っていろ、地下三階の工房に部屋を作る」 「あ、お手伝いしますのマイスター!わたし達の部屋ですし……」 「いいのか、力仕事だぞ?その躯なら、神姫素体より楽だろうが」 「……大丈夫、この躯だと普段よりは力が出せそうな気がするよ」 「えっと、クララちゃんの“ゲヒルン”……大丈夫みたいですね」 神姫素体に端を発する症候群“オーバーロード”だが、HVIFでは 功罪どちらも微少ながら症状が中和される様だ。これは要報告だな。 というわけでよく働いてくれる三姉妹の御陰もあり、フロアの半分は 二時間程で、清潔な仮住まいへと姿を変えた。床も予備を出したぞ。 工房が狭くなったが、地下四階の倉庫フロアにまだ余裕がある筈だ。 「よし、これで完成だ!御苦労だったな皆、良い娘だ……むっ」 「マイスター?……あっ、そうですの今は躯が大きいから……」 「すまんな、普段の様に撫でてやれなくて……よい、しょっと」 抱擁や隅の掃除に苦慮した上で、私は一つの事実を改めて実感する。 “神姫素体で出来る事とHVIFで出来る事は、それぞれ違う”事。 「当たり前の事だろう?」と思うが、実際にやらんとわからぬ物だ。 という訳で屈んでもらったロッテ……のHVIFを、そっと撫でる。 「マイスターの躯って、やっぱりあったかいですの……♪」 「ぶッ?!ろ、ろ……じゃないえっと、兎も角何をッ!?」 「だって素体だとセンサーが無かったですけど、今なら♪」 「あ、あうぅう……確かにそうだが、なぁ……そのなぁッ」 この娘は何を言ってくれるのか。確かに私も、素体では感じ得ぬだろう 感覚を知った。柔らかい肌、暖かく火照った躯。甘い娘の香り、鼓動。 この娘らはまだそれを、備える事はないだろう……野生的な“本能”。 「え、ええっと……ロッテちゃんずるいですよ、あたしも……♪」 「……ボクも、敢えて混ざる。マイスター、何故かおかしいから」 「わ、わぁぁ!?お前達狙っているか、未必の故意なのかッ!?」 元々純粋な“想い”のみであった私への好意。私も自然と応じていた。 だがいざ“HVIFというフィルター”を得た時、それはどうなるか? 無論生理学上では、四人とも女性だ。しかしだ、私達の間には純然たる “想い”が存在する。それが故に、人の中で本能と理性が相克した時は 予想外の方向へ“想い”が飛んでいく。もっと、抱きしめてあげたい。 もっと、愛してあげたい。もっと、愛されたい。もっと、もっと……! 「むう……このぉっ!」 「きゃああぁっ!?!」 私は自分の躯をよじり、ベッドに四人揃って倒れ込む。だがそこまで。 この娘らが自らの……“神姫という知的生命体の本能”を知る日まで、 決して私はこの娘らを穢すマネはしない。一重にこの“想い”故だな。 それは同時に、私の想いが“恋慕”とまで断定できない所為でもある。 自らの心中にある鍵さえも解けずに、その様な事は到底出来ないッ!! 「あいたたた……なあお前達、私と一つ約束してくれぬか?」 「うんと……約束ですか、マイスター?どんな約束でしょう」 「そうだ。その躯は明日から、日替わりの当番制で使おう!」 「……当番制?マイスター、理由を聞かせてほしいんだよ?」 「有無……お前達には、双方の視点を持ち続けてほしいのだ」 「双方って、神姫と人間の視点、ですの?……はいですの♪」 今後ずっとHVIFのままで触れ合うのは、何か違う気がするのだ。 上手く説明は出来ないが、人と同じ心を持つ神姫達であっても、急に 『ある日目が覚めたら、肉の躯になっていた』では良くないと思う。 後は決して言えないが、私の胸が……その、はち切れそうにな……。 ……貴様、口外してみろ?地獄の果てまで、追い掛けてやるからな? 「その代わり、だ。その躯の時に使う名前を、つけてやろう」 「名前?……確かに、神姫と同名だと周りが混乱するんだよ」 「そうだ。順番に……茜(あかね)、葵(あおい)、梓(あずさ)」 アルマ・ロッテ・クララを、それぞれの色に因んだ名前で呼ぶ。 “緑色”だけは少し捻り、梓──ヨグソミネバリの雌花だがな。 同時にその間、私は“お姉ちゃん”であるが……まあ構わんか。 「というわけで、茜、葵、梓。今日だけは四人一緒に寝ようかの」 「はーいっ!やったぁ、まいす……お姉ちゃんと一緒ですの~♪」 「……まずは一緒にお風呂に入って、埃を落とさないとだめだよ」 「そ、そうか……では狭い風呂だが、洗いっこしてやろうかな?」 「あ、はいっ。うんと……宜しくお願いします、お姉ちゃんッ!」 ──────貴女達をもっと大切にしたいから、今は……。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/116.html
【なぜなに武装神姫、そのご】 「デンドロねここをちょっと作りたくなってしまって大変なみさにゃんです」 「1/144だけはやめてにゃ……高いの」 「(しれっと)さて今週はこちらです」 『武装神姫は食事をするの?』 「これも個々人の考えなのですが、ねここの場合はご飯を食べます。99,7%は完全に消化されて完全にエネルギーになっちゃいます。 と言ってもメイン動力は恐らく電池充電式だと思いますが」 「気にしてなかったとも言うの」 「言いにくいことをずばっと言うわね」 「にゅふふ~☆ ずばっと参上! ずばっと怪傑なのっ♪」 「しかしほぼ全部消化するなんて何処かの青い有名ロボットと一緒ね、猫だし」 「え゛ー」 続く 上へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/375.html
*なぜなに武装神姫、そのなな* 「はい、宴会明けでグロッキーなみさにゃんです……早く寝たいorz」 「ねここは何かスッキリなのー☆」 (ま、あれだけやればね……) 「で、今回はこちら」 『神姫のユーザーってどんな人が多いの?』 「これはもう多種多様ね。バトルメインの武装神姫として考えた場合は10~30台前半くらいまでの男性オーナーが多いけれど、 ドレスアップやペット感覚で買う人の年齢層はそれこそ老人にまで及ぶわね。 お手伝いロボット感覚で買う主婦層も多いらしいし」 「ねここもお手伝いするよ~♪」 「失敗しそうだからヤダ」 続く? 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1034.html
剣の王妃、戦場を去れば神の姫君 アルマの戦績記録カードを受け取った後も、私・槇野晶は現実感が今一つ 乏しかった。いくら小さな島とは言え、天空に浮かぶ大陸ごと対戦相手を 斬り捨てて……否、消し飛ばしてしまったのである。そんな中で冷静さを 保てたのは、当事者の神姫二人……そしてクララのみである。ロッテも、 普段の彼女からすれば落ち着いていた方だ。神姫のみのシンパシー故か? 「しかしアルマや。あの巨大な爆炎……魔剣の能力、ではないな?」 「はい。電磁加熱機構をオーバードライブさせただけですよ、ただ」 「……エネルギーを無駄にせず、魔剣に蓄熱させて活用したんだよ」 「そうですの。わたしとアルマお姉ちゃんの剣は、頑丈ですから♪」 「あ、あたしの言葉~……とにかく、あれはマイスターの力ですっ」 確かに“ヨルムンガルド”と“マビノギオン・アサルト”の発生熱量を 全て一点に集約すれば、起爆は可能……だが、それだけでは自分の躯が ダメージを負ってしまう。恐らくは、刀身自体を耐熱装甲代わりにして 爆風を誘導したのだろうが……それを為しうるエルテリアの力。そして 複雑な挙動を容易に制御するアルマの潜在能力。恐ろしい娘だ、有無。 「にしてもだ。あれらを見て、驚くのが神姫より人間ばかりとはな」 「“肉の躯”だと、多分兵隊さん位しか想像できないと思いますの」 「ですね……あたし達は、戦う定めに身を置く“武装神姫”ですし」 「戦の中にあればこそ、敵の力を冷静に見極める能力を得る……か」 「と言っても全く驚かなかった娘は、流石に居なかったと思うもん」 “人間”として産まれ生きてきた私では、確かに現象を解析こそすれど あの“一撃”を感覚として“理解”する事は、さぞ骨が折れるだろう。 だが、それでも私はやらねばならん!“アルファル”を完成させる為、 この娘らの為に……同時に私の“追求したい”エゴの為でもあるがな? 「……よし、着いたぞ。今日の祝勝会はここでやる、いいな三人とも」 「お、お茶漬け屋“ばんじゃ~い”?……お茶漬け食べるんですの?」 「ここの鮭茶漬けが、旨いと聞いてな。アルマは塩味を好む質だろう」 「あっ……は、はいっ!でもいいんですか、あたしの好みなんかに?」 『なんかに』などと言うな……と指でアルマの口を塞ぎつつ、入店する。 秋葉原からほど近い場所だが、流石に神姫を連れた客は少々珍しい様だ。 襷を掛けた若い女性店員が、物珍しそうな目をしつつ案内をしてくれた。 ……何故かクララが、私の胸で落ち着かん。こっそり理由を聞いてみる。 「店員さんは、塾の……ほら、倭さんなんだよ。フィオラを欲しいって」 「なんと。狭い様で広いがやっぱり狭いな、東京は……うぅむ、意外だ」 この店員は、クララがHVIFの姿で“通っている”塾の友達らしい。 とは言え、彼女は“神姫のクララ”を見た事がない。私も初めて逢う。 不用意にクララの“声”を聞かれねば、悟られる心配は少ないだろう。 それに今日はアルマの祝勝会。倭とやらには、今日の所は黙っておく。 「はい。それじゃ、鮭茶漬け二の梅茶漬け二ですね……食べられる?」 「何も私一人で食べる訳ではない故な。気にせず持ってきてくれぬか」 「は、はぁ~……まさかその神姫達が食べるんじゃないです、よねぇ」 「ふふ、そのまさかだと言ったらどうする?さ、準備を頼むぞ店員よ」 自らも神姫を伴侶としている故に、私の言葉はより一層驚きの的らしい。 それでも、カリカリに灼け脂の弾ける鮭が出てくるのは間もなくだった、 仕事は手を抜かずきっちりこなす性格らしい。気に入ったぞ。身を解せば ジューシーな汁が湧き出す鮭。柔らかく見るだけで唾液を産む紀州の梅。 「蓮華も三つ、倭とやら気が利くな……さ、皆遠慮せずに食べるが良い」 「はいですの~♪マイスターとアルマお姉ちゃんは、鮭の方をどうぞっ」 「ボクとロッテお姉ちゃんは梅茶漬けだよ。ほら、アルマお姉ちゃんは」 「あ、覚えていてくれたんですね?……あたしが酸っぱいのダメだって」 そうなのだ……情けないが、私達四人は食べ物の好き嫌いを持っている。 中でも私とアルマに共通するのは“梅干しが食べられない”という事実。 私の梅干し嫌いは、碓氷灯にも共通した先祖由来の性質らしい。アルマは もっと大雑把に“酸っぱい物が嫌い”なのである。マリネも苦手らしい。 「じゃあ、私も戴くとしようか……まだ手伝いは不要か、三人とも?」 「はい。コレ位の“荷物運び”なら、お店でもやりますしね……っと」 「でも、鮭の方は少し大変そうかな?ボクらのは、これだけだもんね」 「なんだか、お昼にやっていた大豆運びのゲームを思い出しますの♪」 ここで“茶漬け”を選んだ己の不明を呪う。そう、ご飯に乗せる具材。 神姫の躯では、これらを解してお椀へと移す作業が非常に手間なのだ。 だが、普段“食事”を行っている彼女らには、それも苦ではない様だ。 「よし。では……戴きます。お前達も準備が終わったら、食べるといい」 「はい、無事完成ですの!じゃあ皆蓮華を持って、戴きますですの~♪」 「戴きますなんだよ……はむ、ん……あちち。でも酸味が美味しいかな」 「戴きますッ。はふはふ……あむ。ん……鮭が美味しいです、とっても」 「気に入ってくれたなら何よりだ。ん?アルマや、何をしている……?」 鮭茶漬けが入った蓮華を抱え上げて、アルマが隣のクララに突き出す。 それを美味しそうに、クララが食べる。そして、次はロッテに……!? ──そう!『あ~んしてください♪』というあのセリフと共に、だッ! 予期せぬシチュエーションを目前にして、思わず私も動揺してしまう。 「じゃあ次は……マイスターですっ。はい、あ~んしてくださいね♪」 「て、照れるじゃないかアルマや……あ、あ~ん……んむ、んむ……」 「如何ですか?って同じ鮭茶漬けだから、有り難み薄いでしょうけど」 「う゛、そんな事無い!そんな事は無いぞッ!!……だってな、その」 ──────大切な人にしてもらうと、美味しいからね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2647.html
ビックリした。 途中から、シオンになんでか知らないけど、通信を切られてしまった。 驚いたのはそれも理由の一つだ。 だけど僕が一番に驚いたのは、 ――シオンが勝てたことだ。 あのムルメルティア型になにか言われてたかと思ったら、突然、あの丁寧な物腰の神姫シオンが今まで見たことないくらいに大激怒した。 怒った後はまるで別な神姫に変わったように、練習でしか使えてなく本番のバトルでは一切使えていなかった武装を巧みに使い、勝利を掴み取った。 僕が興奮冷めやらぬ状態なのに対して、アクセスポッドからはオドオドとしているシオンが出てきた。 「すいません、螢斗さん。命令を無視して通信を切――」 「やったじゃないか、シオン! ハハハ!!」 「え、ちょっと螢斗さん? ……きゃっ!」 シオンの脇部分に手をやって軽く持ち上げている。でも、僕の頭より高い位置に。 まあ、俗にいう子どもにやるたかいたかい状態だ。 シオンが勝ち星を挙げたことで、また僕のテンションがおかしい。 けど気にしない! 「きゃーー、螢斗さん~!?…………うふふ、あはは~」 シオンもなんだかこれが楽しくなってきてきて、笑いが込み上げてきたみたいだ。 「アハハ!!」 「やったぜ!! 螢斗!」 「シオン、やったわね!」 そして、淳平とミスズも喜んでいる。 うん、バトルも勝てて万々歳、良かった、良かった。 「――ったく、負けちまったか。せっかく替え玉が手に入ると思ったんだがな~」 チンピラさんがいつの間にか近くに寄って来ていた。 ため息を吐いて残念そうにそう言う。 狂喜乱舞していた姿を見られていて僕もシオンも、急に恥ずかしくなってしまった。 「さぁ、負けたのだから、さっさと出て行くのだよ」 君島さんが僕の前に出て来て偉そうに言っている。 あなたは何もやっていないでしょ? 勝手に喧嘩吹っ掛けただけですよね。 「はいはい、わかったからよ。そう急かすな……行こうぜ、『コハク』」 気付かなかったけど、ムルメルティア型の神姫は「コハク」というらしい。 彼のことをチンピラさんとか不良とか思っていたけど、彼もやっぱり武装神姫が好きなだけの人なのかも知れない。神姫の名前を呼ぶ時は優しそうに見える。 ……僕にとっては怖いままだけど。 「貴君よ。さっきはすまなかった、訂正する。……良い上官だな」 彼の肩に乗っている神姫がシオンに頭を下げてなぜか謝った。 なにを言われたら、あんなにシオンは怒るのだろうか。砂風が舞っていて、よく聞き取れなかったのが残念だ。 ワザと怒らす気はないのだけど、なんだか気になった。 「もう気にしてません。……考えてみたら、あなたは本心からそう言ってるとは思えませんでした。戦ってみて気付きました。……なんで螢斗さんの悪口を言ったのかはわかりませんでしたけど」 どうやら、あのコハクという神姫はバトル中僕に対して酷いことを言っていたみたいだ。僕はそんなことで一々怒らないけど、シオンはそれがスイッチになってしまったらしい。 さっきの君島さんとの会話でも思ったけど、僕は神姫マスターとして愛されているみたいだな、うん。 「……ふ、それではな。――タケル上官、もういいぞ」 「……っけ……朝から来るんじゃなかったぜ。あ~あ」 神姫はそれを聞くと顔に笑みを浮かべた。 彼の方はイラついた様子のまま、そう言うとゲームセンターから出て行った。 「ふむ。これで結果オーライになったではないか。私の目論みどおりだ」 「かなり僕が危ない所まで逝きかけたんですけど!? 初めにこういう事をするときは本人の承諾を取ってください! 絶対認めませんけど」 「スパルタだと言っただろう?」 「う、……はあ」 勝てることを君島さんは予期して、僕の立ち位置を危うくさせたという事か。 シオンが恐怖よりも強い感情で塗り固め、勝利できると。だからバトルの前に好きとか愛してるとか聞いたのか。 可能性の問題だと思うのだけど。 シオンがそんなにキレなかったかもしれないし、第一に不良の彼が朝にいたのも偶然だし、その友達が裏の仕事で人手を探していたのだって……。 ……うーん、わからない。 僕がそうやって考え込んでいると、隣にいた君島さんはおもむろに自分の携帯を気にし始めた。 どうやら、着信が掛かってきたみたいだ。 君島さんは携帯を耳に寄せ話し始めた。 「……あー……うむ……そうか、すぐに来いと?……ふむ、わかった……」 「どうやら内容から察するに、主殿は急用ができたみたいでござります。この後は、シオン殿の祝勝会でも、なんでもするといいと主殿はそう思ってござります」 「あ、リンレイ! 今までどこにいたの!?」 ミスズはまたまたその場に現れたリンレイにそう聞くが、それは無視された。 携帯に早口で話している君島さんは「すまない」と手でジェスチャーすると、サングラスを再び掛けてゲームセンターを早足で出て行ってしまった。 「あ、ちょっと!? もう!」 「あの神姫は生粋の“忍者”なんだから気にすんな。あれが普通なんだよ」 「神姫にとってあれは普通の芸当ではないですよ。……ウウ……必ずや私が突き止めて見せますぅ」 なんとしても納得がいかないミスズは半泣きになりながらも、リンレイを完全究明する決意をしたみたいだった。 「私は勝てたんですよね?」 胸ポケットに戻ったシオンが僕に聞く。まだ実感が湧いてないみたいだけど、 「うん、そうだね。……偉かったよ」 よしよしと頭を撫でる。まだこの先も、勝てていけるという保証はないけどこの喜びは噛み締めておこう。 「そうですよね……えへへ」 ■■■■ 「はー、スッゲー疲れた。こんなの二度とやらねぇー」 「そう言わない。自分はなかなか楽しかったよ」 ゲームセンターから出て来た彼は、裏通りに入ると格好を直しサングラスや首を重くしていた、いくつものネックレスを外し始めた。 それらをポケットに仕舞いこみ、首に手をやりさすっている。 彼の隠れていた目元は鋭く、サングラスをしていなくとも威圧感はあり、着崩してなくとも不良かと思われるほどのガラの悪さ。 身体の均整がとれていて、服の上からでも筋肉もほどよくついているのがわかる。 容姿“は”整っている。 だが、目元がマイナスになり、周りからは恐れられそうな風貌ではある。 「……っけ……あのやろう言いたい放題言いやがって」 「まあまあ」 頭の上に移動していた神姫が彼をなだめていた。 「そういや、かなりボコられてたんだが平気か?」 目線を上にやり、自分の神姫を不器用そうに心配している。表情は変わっていない。眼つきは鋭いままだ。 それでも、声だけは聞くと優しそうではある。 「心配ない、バーチャルだから。ものすごい痛みがある程度だし」 「腹ブチ抜かれてたんだから、それでも十分だっつうの。あんなになるまで“演技”しなくとも、よかっただろうが」 「もちろん、口調とかそこらの上官たちへの罵詈雑言は役としてのセリフだけど、バトル自体はあまり演技じゃなかったよ。言われた通り本気は出していないけど、結構力は入れていたんだ」 「ふーん。コハクが言うならそうなんだろうな。バトル恐怖症みたいだった、つう話はどこにいったんだか」 「戦えなかっただけで元から強くはあった。けど、CSCから来る怒りがパワーを底上げしたとかかな? 王道展開よろしくそういう展開にさせてみたら、予想外に強くなったみたい。まあ、アーティル型だし当然かな……よっこいしょっ」 ムルメルティア型の武装神姫「コハク」はバトルで起きたことをそう説明した。 コハクは軍帽とサングラスを外してから、彼の頭の上で腕を枕にして寝そべり始めた。 神姫一体が頭に乗っていたらネックレスよりも首に負担がかかると思うが、それが普段の彼たちの姿だ。 「せっかくの休みの日だっつうのになー」 そう愚痴ってから彼は歩き始めた。 その時、 ――ドスン。 「……おい」 突然彼の後ろから誰かが軽く抱きついてきた。 だが、彼も誰が抱きついてきたのかはわかっているのか、あまり驚いていない素振りをする。 もしも抱きつかれた衝撃で、彼が前のめりに動いていたら、頭の上にいるコハクは落ちてしまうからだ。 彼の踏ん張りが功を奏して、コハクはそのまま寝ころがっているままになった。 「すまなかった。……辛い役目を背負わせてしまったみたいだ」 抱きついてきたのは女性だった。背の高い彼と同じか少し低いくらいの背丈。 彼女は彼の後肩部に額を乗せて身体を密着させている。抱きついているから当然だ。それは彼が信頼できる相手だから出来る行為。 それに加え彼女はすまなそうに謝った。 「……っけ……あんなのは慣れてんだよ。心配すんな」 「うん? 心配はしていないぞ」 「ッ……だったら謝ってくんなっつうの!」 彼は腰から回されていた腕を振りほどき、抱きつかれた状態を解いた。 若干顔は赤くもある。抱きつかれて少し恥ずかしかったみたいだ。 彼は彼女の前へ身体を向き直させ対顔した。 「そう怒るな。あと顔が赤いぞ」 「っく、うっせぇ!」 「はっはっは、照れるな、照れるな」 黒のジャケットを着ていて長い黒髪を腰まで流している女性。 そこには君島 縁がいた。 「……いいのかよ、あいつらといなくて?」 「電話が来たフリをして出てきたのだよ」 「ふーん、なんで?」 「猛と話がしたくなってな。心配はしてはいなかったが、怒ってやいないかとな」 「だから、気にしてねぇっつった――」 「タケル上官、それは嘘でしょ。『言いたい放題いいやがって』と愚痴っていたのはどこの誰だったかな?」 “猛”と呼ばれている彼の頭上からコハクは笑いを含ませながらそう言った。 「ふむ。コハクもすまなかったな」 「いえいえ、自分はタケル上官の命令だから気にしてないよ」 「そうか……猛もすまんな」 再度謝ってくる君島。 猛はいつも尊大な態度をとっている君島がこのように素直に謝ってくるのに若干戸惑った。 だが、それはなんとか顔には出さないようにしている。 紛らわすために別の話題、戦ったあの少年と神姫について話し出す。 「バトル恐怖症の神姫を持つオーナーをマジでビビらせろとか。合図したらアドリブで神姫を怒らせて戦えとか、色々と俺たちを振り回しやがって。……ったく、縁はあのチビとかに随分肩入れしてんだな」 「うむ。かわいい後輩なのでな」 「そうでござりますな。長倉殿はご婦人に好かれそうな風貌でござりますし」 君島の肩にはいつも通りにリンレイが立っていた。 君島とは顔見知り、いやそれ以上の関係の猛にとっては、いなかったのにいつの間にかいるリンレイの瞬間出現には慣れているので、特に動じていない。 「…………っち」 それを聞くと胸の内からイラつきが登って来て、無意識に舌打ちをする猛。 「おや、私があの少年に世話を焼いてたら、そっちが妬き上がってしまったのかね? ニヤニヤ……」 彼の態度が変わったのを見てニヤつき始める君島。そして傍にいる神姫たちも便乗して猛に対してニヤつき始める。 「子どもでござりますな。フフ」 「タケル上官はそういうのすぐ顔に出るから。……ふふふ」 「ふん、言ってろ」 また顔に熱が上って来て顔に現れ始めたのに気付いた猛は、それを見られるのが恥ずかしかったので、ポケットに戻していたサングラスを掛けた。 「このサングラスとネックレスとかも、あれに必要だったのかよ?」 サングラスに手をやって顔を背けたまま聞く。 「うむ。変装なども大事なのだよ。観衆が多い中では猛の顔見知りがいないとは限らないのでな。日常生活で支障がでないようにとの配慮だ」 「……っけ、無駄な配慮だこと。俺のツラ知ってる誰かがこんな朝早くにいるとは思えねぇけどな。……俺たちがそんなにこの茶番に必要だったのかね」 「いや、猛たちがいなくとも9通りのやり方を考えてあったが」 「おいコラ!」 不満そうな声を張り上げる猛。 それを見た君島は、 「またそうやって怒鳴るな。ほれ……」 ギュッと。 近づくと今度は前から猛を抱きしめる。 君島は背中に細い腕を回して、穏やかに言う。 「私が猛に会いたかっただけ……と言ったら、どうする?」 「……こんな面倒なことしなくとも、普通に呼んだら来るっつうの。……ったくよ、縁はよくそうやって人をおちょくるよな……」 そう言って猛も君島の腰元にも手をやる。 ストレートな髪の毛を指で梳かしつつ、恥ずかしがらず今度は抱きしめ返す。 「美人なネーちゃんと言ってくれて嬉しかったぞ」 「ありゃ、演技の一環だ」 「そうか。……ふふ」 「笑ってんじゃねぇよ」 「ふ……オシャレしてきた甲斐があったというものだよ」 「いや、キメてこなくても……縁はいつも………そのよ……なんだ……」 「なんだね?」 「///~~。なんでもねぇ!」 顔はサングラスくらいでは赤さが隠しきれなくなっていた。 それからは黙ってしまう猛。 「やれやれ、真正のツンデレめ」 「は? ツンデレ? ……なんだそりゃ」 聞きなれない単語におもわずつぐんでいた口を開いて聞いてしまう。 「ふむ。今を生きているのにツンデレを知らんのか。いいか、ツンデレと言うのはだね、数十年前から続く世の中の人々に息づくものであって猛みたいにツンツンとデレデレが――」 朝から昼に変わろうという時刻。 誰も通らないような裏路地で、抱き合ったまま『ツンデレ』とは何かを説明している、聞いている構図がこの場には展開されていた。 「フフ、仲睦まじいでござりますな」 「ホントにねぇ」 それを生暖かい目で見る神姫たち。 自分たちの神姫が傍にいるのにもかかわらず、そういうのは気にしない二人だった。 彼と彼女は恋人同士なのだから。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2709.html
店長たちが部屋を出るのを確認した私は、声のボリュームを少しあげました。 「えっと、それであなたの名前は?」 さっきも聞きましたが、答えてくれなかったので、もう一度。 「……データが破損していて、わかりません」 今度は答えてくれました。しかし、内容はあまり芳しくありません。 「じゃあ、憶えていることは?」 「……以前のマスターのこと……それと、見慣れないデータだけです」 見慣れないデータ、これは店長が入れたものです。あの樹羽という少女についてのものだと聞きました。 「あなたのマスターは、どんな方でした? 多分、あなたがいなくなって、心配してますよ」 「……それは無いと思います」 「なんでですか?」 「……マスターにですから、改造されたの」 「……っ」 けっこうショッキングな事実でした。 私は、マスターたちがこの子のことを調べている間、改造された武装の方を調べていたから、初耳です。 「だから、心配なんかされていません。もしかしたら、いなくなった私の代わりに誰か改造してるかもしれません」 「…………」 いけません。話がだんだんネガティブな方向に転がっていきます。非常によろしくありません。こういう空気は大っ嫌いです。 でも、この空気を無理に変えようとすると、余計に悪化する可能性があるので、控えます。こじれると厄介です、本当に。 「……今でも、そのマスターの所に帰りたいですか?」 私は少し小さな声で尋ねました。多分、一番重要な質問です。 この答えによって、あの少女がこの子のマスターになるかが決まるわけですから。 「……いいえ、戻りたくありません。戻りたくても戻れません……」 「戻れない……?」 「解除されてるんです。マスター登録が」 「登録が?」 どういうことでしょう? まさか、店長にですか? いえ、いくら店長でもそこまでしません。 『あ、しまった』とか言って解除しちゃうところとか想像出来ちゃいますけど。 「だから、厳密に言えばマスターじゃないんです。私は今、マスター不在の状態で……」 「でも、そのマスターのこと憶えているんでしょう?」 「記憶回路にです。マスターの情報はほぼ全て壊れていて……」 顔は憶えていて、マスターということはわかるのに、名前とかがわからないということですか。記憶喪失みたいです。 「でも、もし戻れるとしたら……」 「……?」 「止めてあげたかった。ほんの少しだけ、憶えているんです。あの人が笑った顔を」 「…………」 「止めてあげたかったけど、どこの誰かわからないんじゃ、無理ですよね?」 ……あぁ、無理ですね、これは。 「……大好きだったんですね」 「え?」 「そのマスターのこと、あなたは大好きだったんですよね」 すいません店長。私には荷が重すぎます。こんなに昔のマスターに想いをはせている人に、新しいマスターを迎えろなんて言うの、無理です。 「……はい、大好き……でした」 「……?」 「でも、それはまやかしでした。本当に私のことを想ってくれていたなら、絶対に改造なんてしません。それでも私はマスターを愛していました。たとえ一方的な片想いだとしても」 彼女は自重気味に笑います。 「こんな中途半端な気持ちが生まれるなら、最初から会わない方がよかったのに……」 「…………」 私は、何を言えばいいのかわかりませんでした。彼女のその瞳の端に浮かぶ涙を見ていたら、何も言えなくなりました。 でも同時に、一つの希望が見えました。 「……そんなあなたに、頼みたいことがあります」 言わなければなりません。この子には悪いですけど、あの少女のためです。 「人助けをしてくれませんか?」 「人助け……ですか?」 「はい、そのデータの人です」 彼女は軽く目を閉じ、再び開けました。 「奏萩樹羽、16歳中卒。身長155cm、体重48Kg、スリーサイズは……」 「それは言わなくていいです」 私がピシャリと言うと、彼女はまた目を閉じて、開けました。 「……高校を中退後、現在まで無職。神姫に関する知識は少ない。また、運動は得意。料理を初め、家事全般が出来る」 ずいぶん詳しい情報まで入ってます。調べたのは店長なのでしょうか? だとしたら後で断罪を加えなくては。 「この人……ですか?」 「はい、神姫のマスターになりたいとおっしゃっていました」 私は姿勢を正します。 「この人の、神姫になって欲しいんです」 「…………」 あー、もう口開けてポカンとしてます。完全にアウトですね、これ。 「いえ、もちろん無理にとはいいません。こちらとしても厚かましいと思っていますし、マスターがいなくなったばかりで気持ちを整理したい時だってのもわかってるんですけど、そんなあなただからって言うと大変アレですけど適役って言うか、普通の神姫じゃダメって店長が言ってたというか、だから何が言いたいかって言うと……」 「はぁ、いいですけど」 「いえ、もちろん承諾していただこうなんて思ってな……っていいんですか!?」 「はい、構いません」 あっさり頷きました。驚きです。こんな突拍子もないお願いを聞いてもらえるなんて思ってませんでしたから。 「今データを詳しくみてみたんですけど、この人も、辛い経験をしてらっしゃるんですね」 「はぁ……それってどんな?」 「彼女のお父様が経営していた会社が、部下の裏切り行為で倒産したんだそうです」 「倒産って、じゃあ今は?」 「記録によると、もう8年も前のことで、今は別の会社に就職してるそうです。しかし、彼女はそれが原因で人を信じれなくなったようで……」 店長と話していた彼女を思い出します。一応まともに話していましたが、あれでも内心信用してなかったんですかね。 「他人を信じられず、他者と距離を開けてしまう。そんな彼女を外に連れだして、社会に復帰させるのが、私の役目になるんですね」 「いいんですか? ホントに」 あんなに前のマスターのことを気にかけていたのに、ちょっと切り替え早くありません? 「いいんです。いつまでも、クヨクヨしてられません。それに……」 彼女は笑います。 「この方なら、絶対に私を裏切らない。そうな気がするんです」 確かに、裏切らない、というか、裏切れないと思います。 だって、人の裏切りを知っているから。 裏切られてしまった人が身近にいるから。 自分は、裏切られる悲しみを味わいたくないから。 「えぇ、私もそう思います」 だから、あの子なら任せられる。 同時に、この子なら任せられる。 そういうことでいいんですよね? 店長。 「…………」 「…………」 エリーゼとあの神姫を二人きりにして、しばらく経った。私は特にすることもないから、棚にならんだ商品を眺めていた。 神姫用の小さな銃や、剣。また、彼女たち専用の防具。 そして、彼女たち自身。 「いいですよね、神姫」 後ろからいきなり話かけられて、かなり驚いた。が、表には出さない。私がこれまでで培ってきた技だ。 「……そうですね」 「彼女たちは機械ですが、もうほとんど人間みたいなものですからね。こうやって並んで箱詰めされているのに、たまに疑問を感じます」 「……人身売買ですか?」 「ははは、手厳しいですね」 柏木さんは薄く笑う。 「僕は、商売を抜きにして、彼女たちがたくさんの人に触れることを願って、この店を開いたんですよ」 「……そうですか」 エリーゼが言っていたことが少し読めた気がした。つまりこの人は神姫のマスターが一人でも増えることを望んでいる。しかも今回の場合、神姫が神姫だ。嬉しさも増すというものだろう。 私は神姫たちを見る。目を瞑り、じっと来るべきマスター待っている。 いつか、この神姫たちにもマスターが来るのだろうか? 「店長~!」 その時扉が開き、エリーゼが姿を表した。後ろにはあの神姫も見える。 「エリーゼ、首尾はどうですか?」 「大丈夫ですー! 一気にマスター登録まで行ってもオールオッケーです!」 どんな会話をしていたのかわからないが、よくあの状態からそこまでことを運んだものだ。 「あなたも、それでいいですね?」 「はい、もう決めました」 はっきりと答える。本当に大丈夫なようだ。 「分かりました。では、こっちに来てください」 エリーゼたちを手に乗せ、柏木さんは店のカウンターへ向かう。私もそれに続いた。 あの神姫をクレイドルに乗せ、柏木さんがカウンターのパソコンを軽く操作する。 「では、手早くやっちゃいましょうか」 「と言っても、樹羽さんのデータは全て彼女にインストールされてますけどね。そうですよね? 店長」 エリーゼがなにやら怖い顔で柏木さんを見る。 「何が書いてあったか定かではありませんが、勘違いしないでください。あれの情報元、及び製作は私ではありません。内容も見てませんよ? 製作者の言いつけでしたので」 「あ、そうなんですか? よかったです」 話から、だいたい私のデータがどうこう言っているのはわかった。柏木さんが作ったのでないなら、誰が作ったのだろう? って、一人しかいないか。 「ま、そういうわけですので、後はこの子の名前と、マスターの呼び方を決めるだけです」 名前と呼び方、か。呼び方は……まあ普通に『樹羽』でいいとして、後は名前か。 私は悩んだ末に、とりあえず言ってみた。 「クラン」 「それでいいんですか?」 確認をとられると、本当にこの名前でいいのか悩んでしまう。物凄くテキトウに考えた名前だし。 じゃあ、なにがいいだろう。 私には知り合いが少ない? んー、知り合い……シリア…… 「シリア……でいいとおもいます」 うん、なかなかしっくりくる名前な気がする。割りと安直な気がするけど。 「じゃあ、呼び方は?」 「それは普通に『樹羽』で」 「分かりました。では入力しますね」 カタカタとテンポよくキーが叩かれ、最後にタンッとエンターキーが押される。 「完了です。どうですか? 『シリア』さん?」 神姫はゆっくりと目を開く。 「はい、大丈夫みたいです」 神姫は私の方を見上げる。 「これから、よろしくね、『樹羽』」 ちゃんとマスター登録は出来たようだ。 「うん、よろしく、『シリア』」 だから、私はそう返した。 第三話の1へ 第四話の1へ トップへ戻る